上昇気流

細々とひとりごとを呟き続けています。

耳障りのいい言葉

最近会社の採用担当に指定されていて、学生からの質問を受けることがちょくちょくある。OB訪問もよく受ける。

そんなとき、すらすらとよどみなく前向きな回答が自分の口から出てくることに驚く。物事には何事にも両面あると思っていて、言い方によってプラスにもマイナスにも捉えることが出来る。30年余り生きてきたからなのか、それとも会社人生10年間で培ってきた技術なのかは知らないが、その使い分けがうまくなっている。相手が欲している内容を推測して、同じ内容を伝えるでも色をコントロールしながら印象操作をするのが得意になった。「嘘は言っていない」レベルの物言いが非常にうまくなった。時々、騙しているんじゃないか、という気さえする。

就職活動をしていたとき、自己分析の過程で自分がどんな人間なのかわからなくなって、他人から言われた自分の印象を一時期そのまま自己分析の結果として言っていたことがあった。何度かそれを繰り返しているうちに、自分のことを「そんなもんかな」と思うようになっている自分がいた。それと同じように、本心でないことでも、印象操作でぺらぺらと話しているうちに、自分でもそう思ってしまうようになっている気がして、なんとなく怖い気もする。本当の自分はそうじゃない、と思っていたとしても、適当に人の顔色を伺いながらご機嫌取りで話しているうちに、自分の考えもいつしかそのように変わってしまっているような気がする。

耳障りのいい言葉ばかり使っているうちに、いつしか問題点にさえ気が付かないような人間になっていたとしたら。上司に対して耳障りのいい言葉ばかりを使う人間が出世しやすいのは会社が人で成り立っている以上致し方のないことなのかもしれないけれど、そういう人間が上に行った結果、経営陣が何も判断できなくなって会社が衰えていく事例はよくある。せめて、自分の頭で、自分の言葉で考えることが出来ることだけは、忘れないようにしておきたいと思うけれど。

「私の責任」という言葉を多用するけれど一向に責任を取る姿勢が態度に表れない政治家を見ながら、ふと背筋が寒くなっている。