上昇気流

細々とひとりごとを呟き続けています。

ワーキングプア

ぎっくり腰の状態は一進一退。ちょっとは歩けるようになったけれど、まだ痛みが走る。4年前であれば明日にはバレーをしていたけれど、もうその回復力はないのだ。でも今となって色々情報を漁ってみると、4年前はあまりにも無謀な行為をしていたのだと気がつく。相当負担をかけたはずなのに、よく再発しなかったな。

そんなわけで1日ベッドの上でごろごろしていてとてもヒマなので、たまには真面目な本でも読むか、と思って読んだのがこの本。転居する先輩から譲り受けて長いこと放置されていた。

ワーキングプア 日本を蝕む病(ポプラ文庫)

ワーキングプア 日本を蝕む病(ポプラ文庫)

なんていうか、ちゃんと教育を受けて、ちゃんと定職に就いて働けることに対して感謝しなければならないな、と思った。日々の業務なりなんなりに文句を言うのは簡単だけれど、その文句すら言えない立場の人たちがいる。構造的な問題だから仕方ないね、社会がそうなってしまっているから仕方ないね、で他人事で済ますのは簡単だけれど、自分が明日そうならない保証は全くないわけだし、生まれた環境によっては自分がそうなっていたかもしれないのである。「自己責任」という言葉ですべてを済ますのは簡単だけれど、自分のことについてその言葉を使うのはいいけれど他人についてその言葉を使ってはいけないと思っている。自分じゃどうにもならないものっていうのはやっぱりあるんだ。そして、この社会で生きる私たちはどれだけ小さいながらもその一翼を確実に担っている。

個人的には、高校生とか大学生とか、この先の進路を決めるべき人たちにこの本を一度読んでほしい、と思った。安易にバイトで食いつなごうと考えているのだとしたら、いずれ成りゆかなく可能性がある、ということや、学は身をたすく、みたいなことを実感として持つのは無理だけれどもせめてその事実だけでも知ることは出来ると思う。それだけで身の振り方は随分変わるはずだ。まず自分の観点に立つならば、自己防衛、という意味でも、刹那的でなく、長期的な視野で物事を見る視点を持ってほしい。あるいは、今ある環境に不満が溜っている人。もちろん不満を解消するためにアクションを起こすのは全然いいのだけれど、「知足」という言葉と共に感謝の念を持つことも大事だと思う。今ある環境でさえ十分に見えるのに、その上に胡坐をかいて文句ばっかり言っている人が世の中にはたくさんいる。良いところもあれば悪いところもあるのは当然で、全てが良い環境なんてない。それを改善するために足を動かすのは素晴らしいことだし奨励されることだと思うけれど、それすらせずに文句ばかり言うのはどうかと思う。そういう状態に自分がなっているとしたら。そういうときに、こういう本を読むといかに自分が恵まれた環境にいるのか、ということが判るのだと思う。何か文句を言いたくなったとき。あなたは本当にその価値があるのですか。それを言うだけ何かをしていますか。そういうことを考えたい。何度かここでも触れているけれど(これとかこれとか)、私の好きな言葉で"Whenever you feel like criticizing anyone...just remember that all the people in this world haven't had the advantages that you've had."(THE GREAT GATSBY)っていうのがあって。結局そういうことだと思うけど。

もちろんここまでの話は自分の枠にとどまった上での話で、そこから社会に目を転じて、この状況をどうしていくのか、とか、その上で自分はどう振舞うのか、とか、そういう建設的なことも考えるべき。けど、その前に、まず、この感謝の気持ちを忘れてはならないのだと思う。

2年前、とりあえず半年くらい働いた後、契約の更新の打診を受けた派遣の女性がぼそっとつぶやいた一言が今でも耳に残っている。「いつ契約が打ち切られるかわからない環境で働くのって辛いことなのよね」って。自分に有利な「制度」を使うのは企業である以上「仕方がない」のだろうけれど、そこで生まれる行き場のない感情ってどうすればいいんだろうね。