上昇気流

細々とひとりごとを呟き続けています。

フィールドワーク

なんだかんだ言って今週も帰ってきてます。普通自動車免許の更新のため。住民票移してないんですよ、まだ。

今日はちょっと学科の人寄りな内容になってしまうかもしれないけれど、今やってることのフィールドワーク性について書いてみようと思います。

毎日ホントに色々なことをしているんですが、この実習、リアルにフィールドワークだったりします。

今は色々な職場を回りながら「実習」をする期間なのだけれど、これが実に面白い。4月に行われていた概論講義的な集合研修を経て、今僕が行っている「実習」は、ある程度の期間を区切って現場に入り、職場で働いている人に見習いとしてついて、その日1日共に仕事をしながら仕事の内容を見させてもらう、という形で行われることが多いものです。イメージとしては「体験学習」に近いのかもしれないけれど(もちろん給料もらってるわけだし、真剣にやってるけどね)、これがリアルにフィールドワークなのです。まず実際に職場に入って、実際に業務をする、ということ自体がまずもって参与観察なのだけれど、その中で、色々聞き取りを行う機会があるわけです。昼飯の時間とかもご一緒して、ちょっとした世間話とかをとっかかりに、その日ついた先輩社員のライフコースを聞き書きしたり、職場に対してその人がどう捉えているか、とかを聞いておいて、あとで書き留めるわけです。もちろん、仕事をしながらも、その仕事がどういう意図を持って行われているだとか、どういう成り立ちで行われるようになっただとかも聞いていきます。これを、毎日ついた先輩ごとに色々やってみる。まさに「外部者の立場からの参与観察」として、様々な物事がどういう成り立ちで出来ていて、どういう風に機能しているのか、っていうのを見ていく過程なわけです。これを繰り返していくと、色々な視点なり考え方なりが積み重なって、おぼろげながら職場の構成が見えてくるわけです。これが職場によって色々違っていることがわかってきて、実に面白い。1つ1つの機関で実習に当たる期間が比較的短いので(1週間程度)、どうしても得られる情報が十分ではないのが残念なのだけれど。情報を十分に把握する前に次の職場へと移動してしまうことになるので、本来ならばもう少し長期間しないと、色々な問題点とかは見えてこないのかなとも思いますが、それでも今は素晴らしく知的興奮に満ちたことをさせてもらっていると思います。

一方で、そういう状況に置かれていることを考えると、現時点でもう少しなんとかなるのになぁ、と思うこともあります。フィールドワークは「書を持って街へ出よう」という言葉の通り*1、「理論を携えて現場に入る」ということが求められるけれども、僕は昔色々サボっていたせいで、この「理論」をまだ十分に身につけられていないので、今とてももったいないことをしているのだろうなぁという気がしているのです。まぁ学部時代に身につけられることなんて限られているけれども、それでもやはりサボりすぎた。「実務的な」観点においても、大学でやっていたような「学問的な」観点においても、今は「理論(というより、むしろ仮説といったほうが正しいかもしれない)」をしっかり持たないままに現場においてフィールドワークをしているようなものなので(理論なきままにとりあえず記述だけ重ねているような状況であるということ)、見えるものが見えていない可能性が十二分にある。そういうわけで、現時点においては、この「理論」的な部分での補強が必要なのかな、という気がしています。学生時代からそうだったけれど、それは今になっても変わっていないのね…(苦笑)。ただ、会社に入りたての新入社員ということで、実務レベルで見ればこれには仕方ない部分もあるし(何しろ学校でやってないのだから)、理論とデータは相互的に補完していくものだということはこれまで多くの人から教わってきたので(現場に出て、理論の不足を実感したら理論の勉強をすればいいし、理論をつけて現場のデータの不足を感じれば現場に出て行けばいいし、ということ)、まぁ、今出来ることは、それら理論と実践の双方を同時並行的に行いながら、少しでも多くのことを吸収するしかないのだろうとは思っています。一応、4月の概論講義的なところで仮説を作るための予備知識は叩き込まれているわけだし、それをもう少し活かさねばならないのだろうね、きっと。ちなみに、そう考えると、人類学的にはとてもよく出来た研修システムな気がするのですが。ホント。

あくまで現時点では「実務的」な観点から見ることが求められているので、バランスをとるのは難しいところではあるけれど、色々見た後で、あるいは見る中で、もう一度これまでやってきた学問的なものとの相互交流を図るとさらに世界が広がるのかな、という気もしています。理論的な部分で言えば、徒弟制とかもう少ししっかり学んでおけば良かったなって今更思っていたりします。多分相当面白いデータが得られるはずなんだと思う。多分視点さえ忘れなければ、いつでも学問的関心を満たすことの出来る状況にはいるんだと思います。ここには色々具体的な話が書けないので(やっぱり具体的なデータで補強しないと説得力のある話は出来ないのだ笑)、色々話してみたいなぁ、とは思ってはいるのですけれども…。相変わらず遊んだりうまいもん食ったりしながら、こんな生活をしています、ということで。たまにはこんな話もしてみました。

とりあえず今晩あたり、久々にもう一度、佐藤郁哉の「フィールドワーク―書を持って街へ出よう―」なんかでも読み返してみようと思っています(笑)。実務的な観点に対しても、多分有用な知見が得られるはずでしょうから。

あと、この文章を読んだだけだとどこの会社かわかんないよね。その程度の抽象化は図ったつもりですけれども、何か問題があったら連絡下さい(笑)。

ではまた。

*1:佐藤郁哉1992『フィールドワーク―書を持って街へ出よう―』東京,新曜社