上昇気流

細々とひとりごとを呟き続けています。

車窓

とても久々に、電車で旅をした。

ふと、昔から、車窓をぼんやりと眺めているのが好きだったことを思い出した。

田園風景と小さな家々の立ち並ぶ町が、次から次へと流れていく。そこにはひとりひとりの数え切れない人間が、それぞれの営みを懸命に紡いでいる。山で、海で、川で。村で、街で、都会で。

自分の人生なんて、所詮数あるそのなかのひとつに過ぎない。自分の身の振り方について、しばしば、何が正しいとか何が正しくないとか、とても細かいところまで気になって身動きが取れなくなってしまうけれど、本当はそんなことって、自分が固執する以上にどうでもいいことなのかもしれない。それぞれがそれぞれなりに動いているうちの小さな1人の人生が少し形を変えたくらいで、広大な湖面に雨粒が1粒落ちるさざめき程度のものに過ぎない。通り過ぎていく景色の中だけでも、無限の可能性が蠢いている。自分の人生なんて、自分の周りのごくごく限られた世界の、ごくごく限られた人間関係の中で進んでいるものに過ぎない。人生もう少し、鷹揚に構えても良いのかもしれない、という気になってくる。

窓の外を眺めながら、そんなことを考えている。まだまだ、自分の街には着かない。電車は私を、街まで徐々に近付けていく。

自分の街に帰って、また明日から、ちっぽけな人生を紡ぎ続ける。