上昇気流

細々とひとりごとを呟き続けています。

読書。

今朝仕事終わって帰ってきて、一眠りした後布団にもぐりこんだまま読んだ、福岡伸一生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書, 2007)という本が面白かった。こないだ「なんか面白い本ないー?」とか言ったら貸してくれた本。

まぁある種、俺自身言ってることを鵜呑みにしちゃってる部分も多々あるんだろうけれど、DNAとか細胞とかその辺について、どんなことが起こってきたのか、とか、どんなやり方で研究してんのか、ということとかが、非常にざっくりではあるけれどなんとなく感じとして掴めた。科学読みもの、みたいな感じ(笑)。放射性同位体使う手法とかあんのね。世の中には凄い方法を考えつく人がいっぱいいるんだなぁ、とか、DNAってこうなってんだ、俺ってなんも知らなかったんだな、とか、割と眼からウロコな感じでさくさく読めた。結構わかりやすく(というか、文章として読みやすく)書いてある方だったと思う。この分野に関しては超が付くほど疎い人間だけれど(そもそも高校で生物とってない気がする)、何を言ってるかくらいは理解できたし。まぁこの手の新書にはつきもので、結構批判もあるみたいだけれど、ライトな読者にはそれなりに読みやすくてわかりやすいとりつきやすいものなのかなと思った。

こういう新書って、基本的に筆者がいかに自分の言ってることが正しいかを主張するものだから、素直にふんふんなるほどと読んでいるとその裏に隠されている矛盾とかにも気が付けないと思う。特に文章が上手い人ほどね。そういう意味では、やっぱり筆者の文章にうまくひきずりこまれてしまっている部分というのはもちろんあるのかもしれないけれど、でもライトな読者にとっては読んでてそれなりの知的興奮が得られるんだと思う。文系人間だから、抒情的な言い回しに抵抗がないからかもしれないけどさ(笑)。新書だし、読み物でいいんさ。

「批判的に読む」という言われ方をよくするけれど、自分の土俵でないところで批判的な読み方をするのは実はすごく難しい、というか、不可能なことだと思う。批判っていうのはそもそも比較対象する何かがないと出来ないことだし、それ以外のものに基づく批判というのは直観に基づいた単なる好き嫌いでしかないし。でも、その点を取っ払って(むしろ、織り込み済みとして?)読んでみれば、まぁ世界観とかそういうものはそれなりにつかめるのかな、という気もする。そういう主張的なものが含まれている、だとか、そういったことをすべてひっくるめた総体としてね。

自分の専門分野を決めて、その分野で自分の知識を重ねていくことによって、だんだんと見えてくるものっていうのは絶対にある。それこそ、今繰り返しテレビで見るような「知層」なんだよね。きっと。昔自分の専門の教授に言われた言葉を今でも覚えてるけど、「本(というか専門書というか)は1回読んだだけじゃ到底理解できないと思う。1回懸命に読んでもわからなくて、それでもとりあえず読んでみて、他の本とか読んで色々知識をつけた後にもう1回読んで、前よりはわかるところが増えるんだけどそれでもわからないところはあって、さらに知識をつけてまたわかるところが増えて…の繰り返しだと思う」というような趣旨の言葉だったと思うけれど。ちょっとずつ知識が増えてくると、だんだん比較対象の相手が増えて、どの点に着目しながら読めばいいか、とか、どの点が大事な点なのか、というのがわかりながら読めるようになってくるんだよね。マッピングが頭の中に出来るようなイメージで捉えているけれど。あぁ、これはこの辺に落としどころがあるな、とか。

そういう意味では、「知層」が相当薄い分野での読書だから批判的に読むことは出来なかったかもしれないけれど、まぁ読み物として面白く読めました、ということで(笑)。

主張っていうことで言えば、学者は主張して何ぼの世界だから、それこそ持論を貫き通す信念が必要になるんですよね。これまでの論の矛盾を批判し自論の正当さ、新しさを主張するのが仕事なわけだからね。少なからず俺ら企業で働く人間にもそういうところはあるけど、それを生業としていくにはちょっと覚悟が足らなかった身からするとやっぱりすごいよなぁ、と思いながら、読んでました。マイクロメートルとか言われたって、顕微鏡でも見えない世界のことなんて、想像もつかないし(笑)。その先の操作なんて、それこそイメージすら湧かない。今巷に氾濫しているマイクロシーベルトだってそうだけどさ。世の中にはホントにたくさんの学者の人たちがいて、そのそれぞれが自分の論が正しいことを証明するために日々研究に励んでいるんだなぁ、と思うと、つい自分のやってることが小さく見えてしまいますね。

うーん、そこらへんに転がってる主張よりどうしても一段高いものとして取り扱ってしまうのは、やっぱり学問的なものに対する畏怖みたいなものがあるんだろうか。その辺でちょっと無意識のうちに差別が働いている気もするけれど。いや、でも、やっぱりすごいと思うよ。うん。