上昇気流

細々とひとりごとを呟き続けています。

応急救護

今日仕事で消防士の人に応急救護を教わる講習を受けてきたのだけれど、やはり本物の消防士の人に教わると、説得力が圧倒的に違う。

本物の持つ重み

応急救護の講習は、これでおそらく5回目になる。高校の体育の授業で1回、大学の体育の授業で1回、自動車免許の取得の際に1回、会社に入って今の仕事に就くときに1回、そして今回の講習で5回目。でも、これまでの講習は講師が皆先生だったり教習所の人だったりして、それなりに専門的な知識はあるのだろうけれど、今回の講習に比べてしまえば、最低限のこと、というか、やはり「講習」感は否めなかった。

今回の講師は、現役バリバリで働いている消防士の方々である。まぁ制服着て来てる上に、皆様制服の上からでもわかるような日ごろの鍛錬が滲み出る素晴らしい肉体をしていらっしゃるのでそれだけでも説得力があるんだけど(笑)、実技の手ほどきの合間合間に挟まってくるアドバイスが非常に説得力を持たせるのである。例えば、心臓マッサージのタイミング、1分間に100回なんて言われても具体的にイメージしづらいけれど、「ちょっと豆知識として、別に覚えなくてもいいんですけど(笑)、これって『世界に一つだけの花』のリズムなんですね」なんて言われると、すげーイメージしやすいのである。他にも、「とにかく人工呼吸と心臓マッサージの間の時間がもったいない。切替えをどれだけ早くやるかが大事なんです。だから、膝をずらして体の位置をずらすみたいな悠長なことをせずに、膝を肩幅に開いて、状態だけ動かして切り替えるようにすると素早くできます」とか、「マッサージしていいものか迷うときがあるかもしれないですけど、例えばマッサージするところにこぶしを当ててぐりぐりすると、意識のある人は痛がるんですよ。でも、それやっても痛がらないってことは意識がないってことなんで、そうなってたら遠慮なくやるべきですね。えらの裏側のところ押しても同じようになりますけど」っていうアドバイスとか、実際にそういうシチュエーションになった時に役立ちそうなアドバイスがピシッと出てくるのである。過不足なく。凄いなぁ、さすがだなぁ、と思った。

おそらく、消防士の人たちもそうした日々の鍛練と実践の中でこうした知識的なものが蓄えられて伝承されていくのだろうけれど、そういった言葉が体に馴染んでいるというか、とてもスムーズに出てきていて、とてもカッコいいなと思った。俺は仕事の中で果たして自分の仕事で持ちえた知識についてこうやってさらっと語れるものがどれだけあるのだろうか、とちょっとだけ思った。その仕事をしてきたものならではの語りえる重み、というか。おそらく、自分の仕事にもこういうのは何かしらのものはあるはずなんだろうけれど、どれだけそういうのを言語化できているんだろうか。体験を重ねて体で覚えている者だけが持ちえる言葉の重み。

いざ遭遇したときに…

実際に応急救護をしなければならないシチュエーションには、出来ることなら接したくはないものである。けれども、それはいつ訪れないとも限らない。もし仕事をしているときにその時が来た時に、私はおそらくもっとも自らが率先してやらなければならない立場にあるのは間違いないところである。

その時に必要なものは、「勇気」だと思う。おそらく、いざ目の前に人が倒れていたとして、自分がその場に出くわしたとしたら、やっていいものか凄く迷う、というか、ビビってしまうと思う。施した経験はもちろんないので自信もないし、間違ったことをしたらどうしよう、と思う気持ちもある。おそらく。けれども、「やらなければならない」のである。一歩引いた先に待っているものは、おそらく助からない人命と、後悔のみ。結果論かもしれないけれど、その結果は想像すれば簡単なことなのである。だったら、やるしかないよね。

そんな時に背中を押してくれるのが、自分の「立場」と、こうしたちょっとした「アドバイス」なのかもしれない。怖いかもしれない。けれど、自分がいざ制服を着て立っていて、自分がやらねば誰がやるの、というところさえ頭に浮かべば、やるしかないと頭のモードも切り替わるのかもしれない。そして、その時に、こうしたアドバイスがふっと頭に浮かんで、最初の一歩を出しやすくしてくれるのかもしれない。ただ回数とかやり方だけを教わった知識でない、実践的な別角度からのアドバイスが。臆病者に果たして出来るのかどうかはその場になってみないとわからないけれど、出来るか出来ないか、ではない。やらなければならない、やるしかない、のである。実際その場に出くわしたときに、そう思えるか否か。イメージトレーニングだけではわからない、本当の「力」があるのかどうかが試されるところなのだろうね。

いくら5回講習受けて、講師の人に褒められたとしても、練習でいくら上手にできても本番で最初の一歩が出せなければ何の意味もないのである。そういう意味で、自分にとって一番大切なものは、講習では習えない、他でもない、一歩を踏み出す勇気なのだろうな、と思った。

それにしても

消防士の人って、ホント、プロですね。俺は自分の仕事を客観的に見たことはないけれど、ああいう風に仕事をしたいな、と思った。