上昇気流

細々とひとりごとを呟き続けています。

風邪黙考

風邪ひいた。

一昨日の仕事中から喉痛くって、風邪ひいたなーと思って。夜勤終わって帰ってきて、寝て起きたら高熱と酷い吐き気。祝日の夜で当然どこも病院やってるわけがないんで、仕方なく急患診療センターまで同期に車で連れてってもらった。ちょうど実家帰る前で、飲酒してなかったのが幸いして。有難いことです。

急患診療センターは子供を中心に混んでいた。免疫力の弱い子供は、いつ何時病気になるかわからない。祝日だとか深夜だとか、そんなのはおかまいなしに。世の中の親御さんは本当に大変だと思う。そんな待合室で、30分くらい名前が呼ばれるのを待ちながら、祝日でも深夜でも診察してくれる急患診療センターの存在って、有難いな、と思った。なってみないとわからない、というのが健康のありがたみである、とよく言われるけれど、病院って、基本的には「何かあった人」しか来ない場所である。次から次へとやってくる患者さんを捌きながら、ミス1つ許されない仕事が延々と続いていく。健康な人っていうのはそのまま普段通りの生活をしているだけで、そういう人たちは病院には基本的には来ない。世の中には、そういう健康な人たちだけで作り上げられている世界がまずあって、その一方で、健康を害した人たちが集まる場所が確実にあり、健康な人の頭の隅にも及ばないところで日々動き続けているのだ。土休日、関係なく。おそらく大半の人は普段は気にも留めないんだろうけれど、これを有難いと言わずして、何が有難いと言えるのだろうか。

ちょっと脱線して。最近仕事を分類する手段として、そういう見方があっていいと思っていて。葬儀屋とか病院みたいに、基本的には何か不幸があった人が来るところと、結婚式場みたいに基本的には幸福があった人が来るところと。もちろんこれはざっくりとした切り口だし、そうでないケースというのもいくらでもあるだろうことは想像はつくのだけれど、大まかにこの2項対立で仕事を見ると、意外といろいろなものが見えてくるように感じる。人を扱っている仕事には、実はこの切り口っていうのは相当大きいファクターなんじゃないか、と最近思っている。世の中の就活生にとっても、自分の仕事を考えてみるうえでこの軸って大切だと思うよ。

さらにちょっと脱線して。医者という仕事について、体のことって、機械みたいにかっちりした図面に基づいているものでもなく、社会的事項のように参照すべき絶対的ルールがあるものでもなく、曖昧でわからない部分がとても多いのではないか、と感じる。基本的には事実をもとに物事を客観的に捉えることが出来、機械屋であれば図面を元に明確な異常を見つけることが出来るし、法律家であれば人間が決めた絶対的なルールをどう解釈するかで、ある程度のことは解決する。参照すべき絶対的な枠は決まっている。もちろん、両者にそうでない曖昧な部分がいくらでも存在するのも承知しているけれど。けれども、体のことって、そういうわけにはいかないわからない部分が割と多い、のではないかと思う。痛みの表現方法は人により様々だし、人体ってそれこそ1つ1つの個体によってさまざまな違いがあるものだし、「必ずしもそうとは言えない」曖昧な部分や特例が多いのではなかろうか。絶対性が薄い、というか。大抵の事柄は過去の症例をもとにある程度はパターン化しているとは思うけれど、ほんの一部の、似通っていたり、見過ごされたりしがちな、パターンから零れ落ちる病理の存在、あるいは個人個人の特性がきっと話をややこしくするのだろう、と勝手に想像しているけれど。拠って立つべき絶対的なルールが決まっていない上に、訴えに主観が混じりこむ。そこにミスが入り込む確率も高くなるんじゃないだろうか。こういうのも仕事の見方の1つの尺度としてあってもいいんじゃないかと思うけれど。

随分と話が逸れた。正直こんな風邪ごときで診療受けていいものか迷ったけれど、結局行ってしまった。「急患診療センター」と銘打っている以上、もっと重篤な人が使うべき時間を自分ごときで割いて良いものか、とか思ったけど、きっとその辺の判断は向こうでしてくれるのだろう、と思って。昨今新聞をにぎわせている救急車の私的利用の問題のように、世の中の線引きなんて、結局その人がどう考えるか、でしかないのだよね、きっと…。痛む頭でそんなことをぼんやりと考えていたら名前が呼ばれた。診察自体は10分足らずで終わったように思う。そこからは早かった。

幸い昨日は休みだった。前回風邪をひいたときも、確か症状が最もひどい日が休日で、結局日常には差し障りがなかったように記憶しているのだけれど。8時半に起きて朝飯食って、10時に寝て、先輩に「飲みに行こうぜ」って18時にノックで起こされるまで(もちろん断ったけれど)8時間ひたすら寝続けた。寝られるもんなんだな、って、起きて思った。夕飯食って、9時にまた寝た。

今日も微熱のだるい感じと鼻喉周りの熱っぽい感じはまだ消えないけれど、残念ながら今日は午後から仕事。年休突っ込んで休むなら今から電話しなきゃだけど、月1回しかない作業が今日で、おそらくそれを教われるのは今日が最後のチャンス。めんどくせえなぁ、とか、休みてえなぁ、とか、ある種まっとうかもしれない考えが頭をよぎるけれど、まぁ、多少無理をしてでも行ったほうがいいんだろうな。薬はもらっているわけだし、多少はそれで誤魔化せるだろうから。目の前の休息、しっかりと風邪を治すことも大事だと思うけれど、今回の作業を秤にかけるとそっちのほうが大きく見えてしまうんだ。そこの判断も果たしてどっちが正しいかはわからないけれど、まぁ正しかったかは後になってわかることだね。