上昇気流

細々とひとりごとを呟き続けています。

日本海を北上

夜勤明けの今日、3時間半しか寝ていない体をがらがらの自由席に投げ出して、日本海を北上している。日曜だというのに、海沿いを走る特急席の自由席には空席が目立つ。どんよりとした空。これから天気は下り坂らしい。

そういえば最近遠くに行ってないな、と思い、とりあえず荷物を適当に突っ込んで、ふとした思いつきで特急列車に飛び乗った。宿も行き先も、まだ決めていない。とりあえず今晩は、秋田の同期と飲みに行く約束だけはしているけれど。たぶん、前々から行きたかった、角館あたりに行くのだと思う。プランはこれから決める。お薦めのコースは、その土地で聞く。たまには雨も仕方がない。

電車に乗る前に1冊、文庫を買った。ぱっと手に取ったのは、山本文緒の小説だった。じわじわと背筋を襲う恐怖。ホラー小説よりもよっぽど生々しい恐怖。女のひとって結局、男よりよっぽどリアリストだよね。そうじゃないふりしてても。このひとの小説読んでると、そんな女性の世界観に満ち溢れていて、自分が普段見ていない生々しい世界が、細いナイフを静かに体に差し入れられるようにじわりと刺さってくる。絶叫マシンとかお化け屋敷とかハリウッド映画とか、どこか自分とは異世界の、わかりやすくインパクトのあるものを並べたてたような怖さではなく、ひっそりと身近にある現実を淡々と並べたて、ひたひたと周りが侵されていくような、そんな怖さ。密室に、少しずつ、少しずつ、水が満たされていくような。そんな息苦しさ。結局最後は必ずどこか自分勝手な男性作家の本を読むのとはまた違った世界が、身に迫る。

特急はこれからさらに2時間をかけて、秋田へと向かう。適度に揺れる車内は、ぼんやりと車窓を眺めながら頭の中を整理するには丁度良い。ひと眠り、するかな。